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【ヨーロッパ、ロシア、アメリカ: ①( - 1730) ②(1731 - 1835) ③(1836 - )画家リスト】 【アジア】 【題材など

  1. 美人:画像、彫像、写真など



  2. 神話 [ ギリシャ神話とローマ神話ヘラヴィーナスレダと白鳥三美神エオスフローラパンドラダナエ―キルケープシュケとアモルペルセウスとアンドロメダアポロンとダフネディアナとアクタイオンディアナとカリストアテーナーパリスの審判ヘレネーとトロヤ戦争エウロペの略奪セイレーンクレオパトラヴィーナスとアドニスアレスとアフロディテーオルフェウスとエウリュディケ  ]

    1. ギリシャ神話とローマ神話
    2. ギリシャ神話とは、古代ギリシャの諸民族に伝わった神話・伝説を中核として、世界の始まりと神々、そして英雄たちの物語です。物語は、口承形式で吟遊詩人達によって伝えられてきたものです。それが次第に文章となり、体系化され、紀元前6世紀頃、ギリシャの影響を強く受けたローマにおいて、ローマ古来の神々をギリシャ神話の神々と同一視する、いわゆる「ギリシャ語への翻訳」が行われました。そのため、ギリシャ神話と神の名前は違っても同様の内容の神話もあれば、ローマ神話にのみ登場する神もいます。もしくはローマ神話となった時点でギリシャ神話とはちがった性質の神に変わった神もいます。
       例えば、同一視された神として、ギリシャ神話での全知全能の神であるゼウス(Zeus)は、ローマ神話でのユピテル(Jupiter)、英語名のジュピター(Jupiter)に対応しています。同様に、愛・美の神であるアプロディーテ(Aphrodite)は、ローマ神話でウエヌス(Venus)、英語名のヴィーナス(Venus)に対応しています。

    3. ヘラ
    4. ギリシア神話に登場する最高位の女神です。ヘーラー、ヘレとも表記される。クロノスとレアの娘。主神ゼウスの姉であり、正妻でもある。女たちの守り神。結婚と出産を司る神。ローマ神話でユノ(Juno)に対応しています。
       夫のゼウスの不倫に対しての嫉妬がものすごい。ヘラの嫉妬による劇的な結果は、神々や英雄たちの物語を展開していく。美しく堂々とした女神であったので、ゼウスはどんなに遊んでも、いつも最後にはヘラのもとに戻った。ゼウスの英雄一族に対するヘラの敵意は、自然そのものの敵意を象徴する。英雄たちは、ヘラによって引き起こされる苦悩が大きければ大きいほど、その災を克服していく能力によって、ヒロイズムが決定される。
       神々の女王ヘラは、絶対的な優位を保っていた。毎年春にはカナトスの泉で水浴し、年齢と苛立ちを洗い流し、どんな美しい女神やニンフや人間にもかなわないほどの美しい乙女になった。美術の中では、ユノの持ち物は孔雀である。孔雀は古代からユノの聖鳥とされている。ユノの凱旋車を引くのが一対の孔雀。魔法の帯を締めていることもある。夫ゼウスを魅了するため、ヴィーナスから借りたもの。
      ・ 天の川
       ヘーラーの母乳は飲んだ人間の肉体を不死身に変える力があり、ヘーラクレースもこれを飲んだために乳児時代から驚異的な怪力を発揮できた。また、この時にヘーラクレースの母乳を吸う力があまりにも強かったため、ヘーラーはヘーラクレースを突き飛ばし、その際に飛び散ったヘーラーの母乳が天の川になった。なお、ヘーラクレースはヘーラーの子ではないが、「ヘーラーの栄光」という意味の名を持つ。ヘーラクレースが神の座に着く時、ヘーラーは娘のヘーベーを妻に与えた。


    5. ヴィーナス、ビーナス(ウェヌス)
    6. ウェヌス(古典ラテン語: Venus - [ˈwɛ.nʊs])は、ローマ神話の愛と美の女神。日本語では英語読み「ヴィーナス」([ˈvi.nəs])と呼ばれることが多い。後にギリシアの女神アプロディーテ(アプロディテ、アフロディテ、アフロディーテ、アフロダイティとも表記)と同一視され、愛・美・豊穣の女神の総称となりました。
       女神アプロディーテは、娘でもある美と優雅を司る三美神カリスを侍女として従え、「愛」と「憧れ」「欲望」が秘められた魔法の宝帯を身につけ、自らの魅力を増し、神や人の心を魅了します。性格はプライドが高く、そのためトロイア戦争の原因ともなり、自由奔放、多くの恋を重ね多くの子の母ともなっています。夫はヘーパイストスです。恋愛については多々あるものの、主なものとしては軍神アレス、アドニスとの物語が有名です。

      ・ ヴィーナスの誕生
       神話ではヴィーナスは海で生まれたことになっています。クロノス(ゼウスの父)が、その父である天空神ウラノスの男性器を鎌で刈り取って海に投げ捨てたところ、その肉塊から泡が湧きだし、泡の中からヴィーナスが生まれました。ヴィーナスは泡のなかで成長し、西風の神ゼピュロスに吹かれてキプロス島に上陸しました。これがヴィーナスの誕生です。だから、ヴィーナスは海からやってくるし、赤ん坊ではなく最初から成熟した女性の姿で現れるのです。

      ・ 海から上がるヴィーナス

      ・ 眠れるヴィーナス

      ヴィーナスとアドニス
      アレスとアフロディテー
      パリスの審判:「最も美しい女」アプロディーテーとして登場



    7. レダと白鳥
    8. ギリシア神話の主神ゼウスが白鳥に変身し、スパルタ王テュンダレオースの妻であるレダ(レーダー)を誘惑したというエピソードをもとにした、西洋の彫刻や絵画などにおける題材(モチーフ)。この題材は、男女間の性愛よりも女性と白鳥の性愛を描いた絵画の方がまだしも好ましいとする、現在の考えからすると奇妙にも思える16世紀の風潮によって広まりました。


    9. 三美神
    10. 三美神とは、ギリシア神話とローマ神話に登場する美と優雅を象徴する三人の女神です。
       三美神は、ギリシア神話ではそれぞれ魅力(charm)、美貌(beauty)、創造力(creativity)を司っており、一方、ローマ神話では、それぞれ愛(amor)、慎み(castitas)、美(pulchritude)を司っています。
       「三美神」というテーマは、女性の裸体が持つ究極の美を描くための便宜上の理由に過ぎなかったとも言えます。当時は、裸を目的として描かれた絵は非難され、禁じられていました。そのために芸術家たちは、神話に名を借りて裸体画を制作したのです。


    11. エオス
    12. ギリシア神話の曙の女神。ローマ神話ではアウロラAurora(英語のオーロラ)。ヒュペリオンとテイアの娘。太陽神であるアポロンの黄金の馬車を、飛んで先導しているのがエオスです。ティーターンの系譜に属し、様々な恋の物語が彼女をめぐって存在する。


    13. フローラ
    14. フローラは古代イタリアの花の女神で、人々はギリシャ神話の花神クロリスが生まれ変わってフローラになったと考えました。この主題は、ボッティチェルリやプッサンなどの画家に愛されましたが、神話画から単独の女神像だけが独立して画題となり、後に「フローラに扮した女性」の肖像画という形で、手に花を持った若い女性としても描かれました。娼婦をモデルとして描いたティツィアーノや、妻のサスキアを描いたレンブラントの作例はその代表的なものです。


    15. パンドラ(パンドーラー)
    16. ギリシャ神話に登場する美しい女性パンドラ(パンドーラー)は、人類最初の女性として神々によって作られ、地上に送られました。 その時、「決して開けてはならない」と言われて壺(甕、箱)を持たされました。しかし、好奇心に負けたパンドラは、そのふたを開けてしまいます。 すると、中から様々な「災い」が噴出しました。この物語には亜流もあり、あらゆ災いが噴出した後に「希望」が出た、というものもあります。
       こんにち、決して触れてはならないもの、開けてはならないものの例えとして「パンドラの箱」 という慣用句があります。


    17. ダナエー
    18. ダナエーは、ギリシア神話に登場する都市アルゴスの美貌の王女です。黄金の雨に変身し天窓から侵入したゼウスに愛されて、英雄ペルセウスを生んだといわれています。ダナエーは、西洋絵画では人気のある主題の1つになっています。



    19. キルケー(キルケ)
    20. キルケー(キルケ)は、ギリシア神話に登場する魔女です。変身の魔法を使うことで知られています。島を訪れた異国の客を饗応するとき、飲物に故郷のことを忘れさせる薬を混入し、客が飲み終わるのを見計らって彼らを杖で打つ。すると彼らは動物に変身するだけでなく、大人しい性格になり、あるいはキルケーに命じられたとおりに行動するのです。キルケーの館の周囲にはこのようにして動物に変えられた人間が数多くおり、どんなに体が大きく獰猛な獣であっても人間を襲うことはなく、まるで飼い犬のように親しげについて回ります。またキルケーは彼らの身体に軟膏を塗ることで、動物の体毛を取り除き、人間の姿に戻してやることが出来ました。それだけでなく、元の人間よりも美しい姿にすることが出来ました。


    21. プシュケとアモル(キューピッド)
    22. 人間の娘・プシュケが、苦難の果てに愛の神・アモル(キューピッド)と結ばれ、女神となる物語です。「エロスとプシュケ」、「クピドー(キューピッド)とサイキ」などとも呼ばれ、ギリシャ神話やローマ神話、アプレイウスによる「黄金の驢馬(ろば) 」の挿話「愛と心の物語」などで語られます。そこには、“人間の魂”と”神の愛”との結合、そして愛の普遍性が説かれています。
      (解説記事:プシュケとアモル)



    23. ペルセウスとアンドロメダ
    24. ギリシア神話によると、エチオピア王国は美しさを鼻にかけた王妃カシオペアによって支配されていました。カシオペアは自身と娘アンドロメダの美しさが、海神ポセイドンに仕える海のニンフであるネレイデスより優れていると主張しました。ネレイデスがカシオペアの言動に気づくと彼女たちは激怒してポセイドンに抗議し、ポセイドンはエチオピアの海岸を荒廃させ、カシオペアの王国を危険にさらすために海獣を放ちました。王妃は夫ケーペウスともに、ゼウス・アンモンの神託に従って、アンドロメダを怪物に捧げることに決めました。
       一方、ペルセウスはメドゥーサを倒し、母が待つセリポス島へ飛んで帰るところでした。その時、裸の美女が鎖で岩場に括り付けられているが見えました。また、その岩場から少し離れたところを、海獣がまさに美女を目指して泳いでいるのも見えました。その美女がアンドロメダだったのです。王と王妃もこの場におりましたが、うろたえているばかり。アンドロメダの婚約者である王の弟もいましたが、なんということでしょうか!岩場のかげに隠れている臆病者です。
       「あの美女は生け贄(いけにえ)に違いない!」 ペルセウスはアンドロメダの両親に「娘さんを助けたら、私の妻にもらい受けたい」と言い、二人の了承を得ました。婚約者は快く思いませんでしたが、どうすることもできません。ペルセウスは海獣を目指して飛んで行き、固い鱗(うろこ)のすきまから剣で急所を刺し殺してしまいました。一説には、ペルセウスがメドゥーサの首をかがげて石に変えたとも言われています。
       ペルセウスは怪物を倒してアンドロメダを救出し、そしてその後アンドロメダと結婚しました。


    25. アポロンとダフネ
    26. 丁花(ジンチョウゲ)の学名「Daphne odora」の「Daphne」は、以下のギリシア神話の女神ダフネにちなんでいます。「odora」は芳香があることを意味します。また、月桂冠(げっけいかん)は、月桂樹の葉の付いた枝をリング状に編んだ冠のことで、月桂樹は同じギリシア神話における光明神アポロンの霊木として崇められています。

      ギリシャ神話【アポロンとダフネ】
       ある日、弓の名手であるアポロンはエロス(キューピッド)が弓矢で遊んでいるのを見て、子供がそんなものをおもちゃにしてはいけない、とからかう。エロス(キューピッド)は怒り、金の矢をアポロンに、そして鉛の矢を河の神ペーネイオスの娘であるダフネに射る。金の矢は恋に陥る矢で、一方の鉛の矢は恋を拒む矢だから、二本の矢が二人の胸にささった瞬間からアポロンはダフネに恋をするが、ダフネはアポロンを拒否して逃げる日々が始まる。そして、逃げ切れなくなったダフネが父親であるペーネイオスのところへ駆け込み、「助けて下さい、お父様、私の姿を変えて下さい」と訴える。ペーネイオスがその願いを聞き入れると彼女の姿は変化を始め、足元から月桂樹の木になっていく。アポロンがやっと追いついたとき、ダフネは最後の心臓の鼓動を鳴らせているところだった。アポロンはダフネへの愛の記念に、ダフネの月桂樹の葉で冠を作り、生涯それを頭にかぶるようになりました。


    27. ディアナとアクタイオン(Diana and Actaeon)
    28. ギリシャ神話の神々が人間に罰を与えるエピソードは数多くありますが、なかには厳しすぎるのでは?と思ってしまうものも。代表的なのが、猟師アクタイオンが女神ディアナ(アルテミス)とディアナに仕えるニンフたちの水浴を誤って目撃するという神話です。

       アクタイオンは人の頭と馬の身体を持つケンタウロスに育てられた狩人で、この日は50頭の猟犬を連れて狩りに出ていました。森の奥の洞窟で泉を見つけ、身体を洗って水を飲もうとしたのですが、実はその泉は、女神ディアナ(アルテミス)とディアナに仕えるニンフたちがいつも水浴びを楽しんでいる場所だったのです。ちょうどこの時も、ディアナは一糸まとわぬ姿でいました。
       潔癖な処女神で男嫌いなディアナは、裸を見られたことに大激怒。「ディアナの裸を見たとふれまわれるならするがよい!」と叫びながら、泉の水をアクタイオンに浴びせます。するとたちまちアクタイオンは、一頭の鹿に変身。ディアナはアクタイオンが連れていた猟犬たちをけしかけ、アクタイオンは凄惨な最後を迎えます。


    29. ディアナとカリスト
    30. オウィディウスの『変身物語』で語られている狩猟の女神アルテミス(ローマ神話のディアナ)の従者カリストの悲劇を主題とし、対作品『ディアナとアクタイオン』とともにティツィアーノを代表する神話画の1つです。
       カリストは女神アルテミスに従うアルカディア出身の乙女で、アルテミスのお気に入りの娘だった。神々の王ゼウス(ローマ神話のユピテル)は以前から彼女の美しさに目を付けており、カリストと関係を持つ機会をうかがっていた。そんなあるとき、狩に励んでいた彼女が暑さに疲れ、森の中で矢筒を枕に休んでいるのを見つけると、誰もいないのをいいことにアルテミスの姿に変身して接近し、彼女の純潔を奪った。それからしばらくして、アルテミスは狩の最中に服を脱いで、従者の乙女たちと小川で水浴をしたが、カリストだけはいつまでも服を脱いで水に入ろうとしなかった。そこで女神は彼女の服を剥ぎ取り、カリストが妊娠していることを知ると、すぐさま彼女を追放した。ゼウスの正妻ヘラ(ユノ)は彼女がアルテミスのもとを追われるのを見ると、彼女を熊に変えて罰した。後にカリストは森の中で成長した息子アルカスに出会った。息子が自分の母に槍を向けるのを見たゼウスは2人を空に上げ、おおぐま座とこぐま座に変えた。


    31. アテーナー(日本語では、アテナ、アテネと表記される場合が多い)
    32. ギリシャ神話において戦女神としての名が有名ですが、軍神アレスと比較して、「正義と知性のある戦いの神」としての色合いが強い英雄の守護神。アルテミス、ヘスティアと共に貞節の誓いを立てた処女神です。アテーナーは、古くからギリシアの地にあった城塞都市にあって、「都市の守護女神」として崇拝されて来ました。その神殿は、都市を象徴する小高い丘、例えばアテーナイであればアクロポリスに築かれてたパルテノーン神殿(処女宮)になります。
      ・ アテーナーの出生
       ゼウスの最初の妻だった知恵の女神メティスは結婚後アテーナーを身籠ります。けれど、地母神ガイアがゼウスとメティスの子どもは「ゼウスを超える神となる」と予言。これを恐れたゼウスは妊娠したメティスを丸呑みにしてしまいます。メティスが身籠った子を自分の体から生み出す事で自分から生まれた存在にし、運命を回避させようとするのです。アテーナーはゼウスの体内で吸収されることなく成長します。アテーナーが成長するにしたがってゼウスは激しい頭痛を感じるようになり、耐え難い頭痛にゼウスはプロメテウスに両刃斧ラブリュスで自分の頭を割らせます。割れたゼウスの頭から成人して鎧をまとった女神アテーナーが誕生。この時、世界は天変地異に見舞われ、宇宙が揺れ動いたと伝えられています。
       「パリスの審判」の「最も美しい女神へ」において、アテーナーはその権利をヘーラーアプロディーテー(ローマ神話のビーナス)ともに競いました。結果は、アプロディーテーが勝ちました。これがきっかけとなりトロイア戦争が起きるのです。この戦いにおいてトロイア側にはアプロディーテー、ギリシア側にはパリスに拒まれたヘーラーとアテーナーが加勢しました。軍神アレスはトロイア側についたため、アテーナーはアレスとも戦いました。
      ・ アテナとエリクトニオス
       アテナにはアテナイの王エリクトニオスの出生に深く関係しています。古代ギリシャの著作家アポロドーロスによると、アテナは武器を作るためにヘーパイストスを訪れます。その際、欲情したヘーパイストスに襲われ、アテナは逃げますがヘーパイストスはアテナの脚に射精。アテナは精液を布で拭い地に投げ捨てます。この精液が落ちた土が身籠り、後のアテナイ王エリクトニオスが誕生。
       アテナはエリクトニオスを不死にするため大蛇と一緒に箱に入れ、アテナイ王ケクロプスの娘パンドロソスに託します。この時、パンドロソスの姉妹は箱を開けることを禁じられていましたが好奇心に負け箱を開け、その下半身が蛇であったため、あるいは蛇が絡み付いていたために恐怖のあまりアクロポリスの丘から身投げしてしまいました。再びアテナによって育てられたエリクトニオスは成人するとケクロプスから王位を奪ってアテナイ王となりました。


    33. パリスの審判
    34. パリスの審判は、ギリシア神話の一挿話で、トロイア戦争の発端とされる事件です。

       テティスとペーレウスの結婚を祝う宴席には全ての神が招かれましたが、不和の女神エリスだけは招かれませんでした。エリスは怒り、宴席に「最も美しい女神へ」と書かれた黄金の林檎を投げ入れました。この林檎について、ヘーラーアテーナーアプロディーテー(ローマ神話のビーナス)の3女神が権利を主張しました。ゼウスは仲裁するために「イリオス王プリアモスの息子で、羊飼いとして育てられたトロイア王子パリス(アレクサンドロス)に判定させる」こととしました(パリスの審判)。3女神はそれぞれが最も美しい装いを凝らしてパリスの前に立ちました。パリスが服を着たままでは美しさを判断できなかった後、3人の女神は裸になってパリスに女神らの価値を納得させました。なおかつ、ヘーラーは「世界を支配する力」を、アテーナーは「いかなる戦争にも勝利を得る力」を、アプロディーテーは「最も美しい女」を、それぞれ与える賄賂の交渉を行ないました。美の審査よりも、候補者が提案する賄賂のほうが審査の重要なポイントになっていました。パリスはその若さによって富と権力を措いて愛を選び、アプロディーテーが勝ちを得ました。「最も美しい女」とはすでにスパルタ王メネラーオスの妻となっていたヘレネーのことです。パリスはヘレネーを誘拐し、トロイアに連れて行ってしまいました。
       メネラーオスは、兄でミュケーナイの王であるアガメムノーンにその事件を告げ、さらにオデュッセウスとともにトロイアに赴いてヘレネーの引き渡しを求めました。しかし、パリスはこれを断固拒否したため、アガメムノーン、メネラーオス、オデュッセウスはヘレネー奪還とトロイア懲罰の遠征軍を組織しました。ギリシアの王国連合とトロイア(トロヤ)王国との戦争は10年にもわたりました。この戦いにおいてトロイア側にはアプロディーテー、ギリシア側にはパリスに拒まれたヘーラーとアテーナーが加勢しました。(「ヘレネーとトロヤ戦争」参照)


    35. ヘレネーとトロヤ戦争
    36. ヘレネー(ラテン語: Helena、英語: Helen)は、ギリシア神話でトロヤ(トロイア)戦争の原因となった絶世の美女です。長母音を省略してヘレネとも表記されます。世界三大美人とは、クレオパトラ7世、楊貴妃と小野小町を一般に指しますが、小野小町を三大美人に数えるのは日本独自の話であり、世界的にはヘレネーだという指摘があるほどです。
      (解説記事:ヘレネー)


    37. エウロペの略奪(The Rape of Europa)
    38. フェニキアの美しい王女エウロペに目を付けた全能の神様ゼウスが、牡牛(おうし)に変身して王女に近づき連れ去ってしまったというギリシャ神話が描かれたものです。王女が略奪されたルートにあたった土地は、いまではエウロパ(ヨーロッパ)と呼ばれています。
       牡牛座はゼウスの化けた牡牛。エウロパは木星の衛星の名でもあります。


    39. セイレーン
    40. ギリシア神話に登場する海の怪物です。上半身が人間の女性で、下半身は鳥の姿とされるが後世には魚の姿をしているとされました。海の航路上の岩礁から美しい歌声で航行中の人を惑わし、遭難や難破に遭わせる。歌声に魅惑された挙句セイレーンに喰い殺された船人たちの骨は、島に山をなしたという。
       また、セイレーンは、コーヒーチェーン店のスターバックスのロゴマークにも描かれています。そこでの彼女は下半身は魚で、鰭(ひれ)は二又に分かれています。


    41. クレオパトラ
    42. クレオパトラ(紀元前69‐30年)は古代エジプトに栄えたプトレマイオス朝の最後の女王です。
       本名はクレオパトラ7世フィロパトル。絶世の美女とされ、話術が得意で何か国語も話すことができたそう。彼女が生きたプトレマイオス朝は激動と混乱の時代でした。若干18歳でクレオパトラは弟のプトレマイオス13世と兄弟婚をし、共同政策を行いました。しかし、二人の間に亀裂が走り、内戦が勃発します。ローマとの同盟こそが重要であると考えたクレオパトラは、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)に目を付けます。女王は自らを寝具袋(絨毯とも)にくるませ、アレクサンドリアにいたカエサルの元に届けさせました。彼女はカエサルを魅了し、愛人となって自身のエジプト王座を確固たるものとしました。そして、ナイルの戦いでプトレマイオス13世を戦死させます。クレオパトラは国の統治を図りますが、今度はカエサルが暗殺されてしまいます。
       その後、ローマはカエサル派である三名が権力を持ち、三頭政治を行っていました。その一人であるアントニウスに呼び出された時、彼女は美しく着飾ってお色気攻撃を図りました。二人は愛人関係となって三人の子をもうけます。アントニウスはクレオパトラに深入りしすぎた為、ローマ市民に不興を買ってしまい、オクタヴィアヌス(三頭のもう一人)に人気が集まるようになりました。クレオパトラ側はとオクタヴィアヌスと海戦を行いましたが、あえなく敗北。アントニウスはクレオパトラが自殺したとの誤報を聞き、自害しました。クレオパトラも毒蛇に自らの身体を噛ませて自害をしたと伝えられています。こうしてプトレマイオス朝は滅亡してしまいました。

       (アレクサンドル・カバネル「死刑囚に毒を試すクレオパトラ」)
      クレオパトラは美しく死ぬため、すなわち見苦しい死にざまを見せずに短時間で死ぬために、死刑囚に様々なヘビの毒で人体実験を行っていたとされる。

      クレオパトラとアントニウスとの関係の逸話に以下の「クレオパトラの真珠」があります。
       ローマから来た将軍アントニウスが日毎、豪華な宴会を催すことをクレオパトラは不快に思っていました。そこで、クレオパトラはアントニウスと饗宴の豪華さを競った宴会を開きます。当日クレオパトラが出した食事は確かに豪華なものではありましたが、これまでアントニウスが毎夜行ってきた宴会と特にかわったものでありませんでした。アントニウスは、この賭けは自分の勝ちだと確信します。
       しかしそのとき、クレオパトラは自らの耳から大きな真珠のイアリングの片方をはずし、最上の葡萄からできたビネガーの中に落としたのです。誰もがびっくりし、息を止めて見つめるうちに、クレオパトラはその(真珠の溶けた)液を一口にぐっと飲み干しました。ついでもう一方の耳から真珠を外し、別の器に入れようとしました。賭けの審判ブランクスはあわてて彼女の手を押しとどめ、「勝負はついた、賭けは彼女の勝ちだ。」と宣言したのです。


    43. ヴィーナスとアドニス(Venus and Adonis)
    44. 『ヴィーナスとアドーニス』は、ウィリアム・シェイクスピアの3つの長編詩の1つ。原典は、ギリシャ神話にあります。「ヴィーナス」は愛・美の女神、「アドニス」は、フェニキアの王キニュラスとその王女のミュラの息子で美少年の代名詞でもあります。

      【神話】
       フェニキアの王キニュラスの王女ミュラはとても美しく、一族の誰かが「ミュラは女神ヴィーナスよりも美しい」と言ってしまう。これを聞いたヴィーナスは激怒し、ミュラが実の父であるキニュラスに恋するように仕向けた。許されない恋に苦しむミュラを乳母はこっそり手助けをする。二人は祭りの夜に一夜を共にするが、事実を知った父は、娘を殺そうとした。しかし、彼女は逃げのび、アラビアまで逃げていった。彼女を哀れに思った神々は、ミュラをミルラ(没薬)の木に変え、やがてその木に猪がぶつかり、木は裂け、その中からアドニスが生まれた。
       その赤ん坊のアドニスの美しさに、ヴィーナスが恋をします。やがて彼女は赤ん坊のアドニスを箱の中に入れると、冥府の女王のペルセポネの所に預けた。彼女はペルセポネに、けっして箱の中を見るなと注意しておいた。しかし、ペルセポネは好奇心に負け、箱を開けてしまい、アドニスに恋してしまう。こうして、アドニスはしばらくペルセポネが養育することになった。
       アドニスが少年に成長し、ヴィーナスが迎えにやって来るが、その頃にはペルセポネはアドニスを渡したくなくなっていた。2人の女神は争いになり、ついに天界の裁判所に審判を委ねることにした。その結果、1年の3分の1はアドニスはヴィーナスと過ごし、3分の1はペルセポネと、残りの3分の1はアドニス自身の自由にさせるということとなった。しかし、アドニスは自分の自由になる期間もヴィーナスと共に過ごすことを望んだ。
       アドニスは狩りが好きで、毎日狩りに熱中していた。ヴィーナスは狩りは危険だから止めるようにといつも言っていたが、アドニスはこれを聞き入れなかった。アドニスが自分よりもヴィーナスを選んだことが気に入らなかったペルセポネは、ヴィーナスの恋人である軍神アレスに、「あなたの恋人は、あなたを差し置いて、たかが人間に夢中になっている」と告げ口をした。これに腹を立てたアレスは、アドニスが狩りをしている最中、猪に化けて彼を殺してしまった。
       ヴィーナスはアドニスの死を大変に悲しみ、流した涙からはバラが咲いた。やがてアドニスの流した血から、アネモネの花が咲いた。


    45. アレス(マルス)とアフロディテー(Ares and Aphrodite)
    46. アレスは、ギリシア神話に登場する神で戦を司ります。ゼウスとヘーラーの息子です。アイオリス方言ではアレウスもしくはアーレウス(Areus)とも呼ばれます。ローマ神話のマールス(Mars, マルスとも表記)と同一視され、火星とも結びつけられています。
       神話によると愛と美の女神アプロディテ(ローマ神話ではウェヌス(Venus)に対応)はヘパイストス(ローマ神話のウゥルカーヌスと同一視)という夫がありながら、夫の兄弟の軍神アレスと密通した。しかし両者の関係はヘパイストスの知るところとなった。技術に長けたヘパイストスは激怒し、復讐のために目に見えない金属の網を使った罠を寝室のベットの周りに仕掛けると、アプロディテとアレスは夫のいない間にベッドで逢瀬を楽しもうとして、罠に掛かり、網に捕らえられて身動きができなくなった。2人はあられもない姿を神々の目にさらされて大いに恥をかいたが、ヘルメスはアプロディテの相手が出来るなら恥くらいさらしてもいいと話した。その後、両神は海神ポセイドンの仲裁でようやく解放されたという。


    47. オルフェウスとエウリュディケ(Orpheus and Eurydike)
    48. 【冥界下り】
       吟遊詩人であるオルフェウスが結婚してまもなく、妻であるエウリュディケ(ニンフの一種/木の精霊)が毒蛇に噛まれて命を落としてしまいます。どうしても彼女を忘れられないオルフェウスは、冥界から彼女を連れ戻すために「冥界下り」を決心します。
       冥界の入口で番をしている番犬ケルベロス(3つの頭を持つ怪物)や三途の川の渡し守であるカロンらにであうと、オルフェウスは妻をなくした悲しみを竪琴の調べにのせて表現し、それを聞いた彼らはオルフェウスを先に通します。ついに、冥界の王ハデスと女王ペルセフォネに会うところまでたどり着き、そこでまた竪琴の演奏をすると、ハデスもその音色に感動し、エウリュディケを地上に戻すことを許してくれました。
       ただし、ハデスはエウリュディケを地上に戻すために1つの条件をつけました。それは、冥界を出るまで、後ろを振り向いてはいけない、というものでした。暗い冥界の道を先にオルフェウス、続いてエウリュディケが歩いていきます。オルフェウスは、エウリュディケがついてきていると信じてあるき続けました。
       しかし、もうすぐ出口、というところでオルフェウスは後ろから足音がしない事に気が付きました。妻が本当についてきているのか不安になったオルフェウスは、振り向いてしまいます。エウリュディケはそこにいました。しかし、禁を破ったために、彼女は再び冥界へ連れ戻されてしまいました。


      【地上への帰還後】
       妻を失ったオルペウスは女性との愛を絶ち、オルペウス教を広め始めました。ディオニューソス(豊穣とブドウ酒と酩酊の神)がトラーキアに訪れたとき、オルペウスは新しい神を敬わず、ただヘーリオスの神(オルペウスは、この神をアポローンと呼んでいた)がもっとも偉大な神だと述べていました。これに怒ったディオニューソスは、マケドニアのデーイオンで、マイナス(狂乱する女)たちにオルペウスを襲わせました。マイナスたちはオルペウスを八つ裂きにして殺しました。
       マイナスたちは、オルペウスの頭と竪琴をヘブロス河に投げ込みました。しかし、竪琴の上に頭だけのオルフェウス、それでも歌を歌いながら河を流れくだって海に出て、レスボス島まで流れ着きました。島人はオルペウスの死を深く悼み、墓を築いて詩人を葬りました。以来、レスボス島はオルペウスの加護によって多くの文人を輩出することとなりました。また、彼の竪琴はその死を偲んだアポローン(一説にはアポローンの懇願を受けたゼウス)によって天に挙げられ、琴座となったのです。


  3. 聖書 [ アダムとイブマリアの結婚受胎告知聖母マグダラのマリア聖カタリナユディトサロメスザンナと長老たち/スザンナの水浴  ]

  4. 他の題材 [ オダリスクオフィーリアゴダイヴァ夫人ルクレティア  ]